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警察に摘発されて表面化したケースだが、実際のところ同様のことをやっている業者は少なくないとされている。
夜間は無人になる倉庫や工場の駐車場をこっそり借用し、夜の間の車置き場にしてしまう業者。
数十台も運び込み、鍵はかけずに朝まで放置しておく。
鍵をかけないのは、もともと停めてあった車と区別できるようにするためだ。
そして従業員も、かなり怪しげな面々が集まっている。
車を空港で客から預かり、駐車場まで運ぶ手間賃は、おおむね五百円ぐらいが相場。
だれもがひどい低賃金で働かされているから、仕事に対する責任感はとても低い。
山崎夫妻が参入した羽田民間駐車場業界は、なんとも驚くべき世界だったのである。
そしてそこに参入した夫妻のビジネスは、当初は惨憺たるありさまだった。
二〇〇一年夏に開業して、最初の一か月の間に利用してくれた客は、たったの一人。
夏休みのオンシーズンだというのに、閑古鳥が鳴いていた。
「広告を出してないんだから、そりゃ来るわけないよ」と、翌月から大手旅行情報誌に広告を出した。
一ページの四分の一ほどのわずかなスペースであるのにもかかわらず、月二回刊の雑誌に二回広告を出稿し、料金は三十万円。
雑誌広告としてみても、かなり高い部類に入る。
しかし結果は芳しくなかった。
ようやくぽつぽつと予約は入るようになったものの、せいぜい一日に数件から十件程度。
広大な駐車場はほとんどが空いていて、二人で「こりゃ野球ができるな」と自嘲気味に苦笑いした。
当然、儲けが出るわけもなく、開業からおよそ一年の間に運送業で貯めたカネを、全部何とか日銭を稼いだ。
「こりゃダメだ」と、大手週刊誌にもがんばって広告を出してみた。
しかし高い金額を払ったにもかかわらず、その週刊誌の広告を見てやってきた客は、たったひとりだった。
何の広告効果もなかったのである。
「どうして客が来ないんだろう?」と自問自答する日が続く。
そこで考えあぐねた末、近所の駐車場業者や業界人などにそれとなく聞いたりして、ようやくわかってきたのは、駐車場ビジネスの特異な構図だった。
多くの駐車場業者は、実は大手旅行代理店と提携している。
つまり旅行代理店がツアーや航空券などの書類をまとめて顧客に渡す際、封簡の中に一緒に駐車場のチラシを入れてもらうのだ。
そのコストは決して安い金額ではない。
契約すれば駐車場利用料金の二五〜三〇パーセントをマージンとして旅行代理店側に取られてしまう。
おまけに加盟料や協賛金と称して、別途キックバックのようなものも要求されるのだ。
ホームページに出会うしかしそれだけ払っても、十分にペイできるだけのパワーが旅行代理店の「チラシ同高級外車を自慢げに乗り回している姿は、京浜島界隈では珍しい光景ではなかったのだ。
いや、怪しげな業者であればあるほど、実は駐車場業にかかる経費は少ない。
一口運んで五百円という安い値段でアルバイトを雇い、ちゃんとした駐車場も借りずに路上駐車などですませているから、固定費はほとんどかからない。
極論すれば、携帯電話一台持っていれば可能になってしまう裏っぽいビジネスなのだ。
だから大手旅行代理店に巨額のマージンを払っても、十分にペイできるということになる。
山崎夫妻は、「やっぱり旅行代理店にお願いするしかないか」とも考えた。
しかしB&Bは正規に千五百平方メートルの駐車場を借り、しかもきちんと従業員を雇って給料を支払っている。
たいした売り上げもないのに旅行代理店に巨額のマージンを支結局のところ、大手旅行代理店に寄りかかった駐車場ビジネスというのは、経費を徹底なのだ。
駐車場業者たちが犯罪すれすれにまで踏み込んでいるのは、旅行代理店からのわずかなおこぼれをもらうために仕方なくということもいえるかもしれない。
では正規にビジネスを展開しようとしているB&Bほどうすればいいのか。
山崎夫妻がインターネットに出会ったのは、悩みに悩んでいたそんな時期だったのであきっかけは、それまでもB&Bの広告制作をしてくれていた知人だった。
「ホームページを作った方がいいよ」とアドバイスされた。
「民間の羽田空港駐車場。
B&Bパーキング。
羽田空港近くの駐車場。
オンライン予約も可能」とキャッチフレーズをつくり、ホームページからも駐車場を予約できるようにした。
これだけでもかなり予約が来るようになったが、さらに飛躍するきっかけになったのは、なんと言ってもキーワード広告に参入したことだった。
キーワード広告を利用山崎夫妻が利用したキーワード広告は、グーグルの「アドワーズ」とオーバーチュアの「スポンサードサーチ」だった。
世界的に見ても、日本市場だけを見ても、この二社がおおむね市場を分け合っている。
だから山崎夫妻がこの二社のサービスを利用したのは、当然の成り行きだった。
ここでいったん、山崎夫妻の物語から離れよう。
キーワード広告というのほどのようなサービスなのだろうか。
ここからしばらくは、キーワード広告というものを詳しく説明していきたい。
「キーワード広告なんてとっくにインターネット業界の中では、ここ数年、キーワード広告というビジネスが巨大な存在になってきている。
_そしてその先頭を走っているのが、実のところグーグルなのである。
キーワード広告について、説明を続けよう。
グーグルやヤフー、MS検索を利用したことがあるだろうか。
たとえばヤフーのホームページだったら、の言葉を入れれば、その言葉についての検索をすることができる。
従来、ホームページの検たとえば「自動車」という言葉で検索をしてみる。
すると、画面の中央上部と右側にそれぞれ、「スポンサーサイト」。
これがキーワード広告である。
一方、トヨタ自動車株式会社グローバルサイト、Yahoo自動車などと並んでいる。
ここはキーワード広告ではなく、アルゴリズム検索といわれる広告宣伝抜きの純粋な検索結果だ。
ではこのキーワード広告ほどのようなしくみで表示されているのだろうか。
たとえばあなたが東京の神楽坂にある花屋の主人だったとする。
近所のお客さんはついているけれども、もう少し売り上げを伸ばしたいため、あなたはグーグルとオーバーチュアの両方にキーワード広告を出すことを考えた。
まずやらなければならないのは、グーグルのホームページを開いて、キーワード広告のアドワーズに登録することだ。
登録料として最初に五百円徴収される。
支払いはクレジットカードだ。
この作業から以降は、すべてホームページ上でボタンを押したり、キーボードで文字を入力していくだけで行えるようになっている。
対面の窓口は存在しない。
次に広告の文面を考える。
タイトルと本文の文章、それにホームページのアドレスを入力する。
たとえばこんな感じだ。
広告文面ができたら、次にやらなければならないのは「どのような検索キーワードを選ぶのか」という作業だ。
たとえば「花屋」という検索キーワードを設定したとしてみよう。
「花屋」というキーワードで検索すると、あなたの広告が検索結果に表示されることになる。
クリック単価は最小七円しかないし、落とし穴もある。
日本全国には花屋さんは星の数ほどもある。
もし数百の花屋さんがみんなアドワーズに広告を出し、キーワードに「花屋」を設定してしまったら、どうなるだろう?@@@@@@@@@@
実はグーグルもオーバーチュアも、キーワード広告には「オークション方式」を採用している。
つまり金額を入札して、高い値段を付けた人が落札するというやり方だ。
ヤフーオークションなどのインターネットオークションが普及したことで、一般の人たちにもごく普通に利用されるようになった。
たとえばアドワーズの場合、広告料金は「クリック単価」によって決められている。
グーグルの検索結果を見ている利用者が、その広告を一回クリックして広告主のホームページに行くごとに、料金が発生するしくみだ。
そしてクリック単価の最小価格は、七円。
もし「かぐらざか花店」の広告をアドワーズに出して仮に七円で落札できたとする。
アドワーズを経由して百人の人が来てくれれば、七百円の広告料金をグーグル側に支払うことになる。
でも七円で落札できることは、滅多にない。
特に「花屋」なんていう誰でも思いつきそうなキーワードで落札して広告を出そうとすると、競争相手が多いから、落札価格ほどんどん高騰してしまう。
たとえば「融資」「キャッシング」なんていう人気キーワードともなると、クリック単価は三千円ぐらいにもなっている。
利用者ひとりがクリックしただけで、アドワーズに広告を出している消費者金融の会社は、毎回三千円を支払わなければならない。
一万人がクリックすれば、広告料金は三千万円にもなる。
それでも広告を出し続けている業者がたくさんいるのだから、キーワード広告がいかに広告効果が高いかわかるというものだ。
実際には、入札で高い値段を入れた順に、広告の掲載位置が決まる。
たとえば「花屋」のキーワードでオークションをやって、こんな順位になったとする。
かぐらざか花店この場合、キーワード広告は「麹町フラワーショップ」「かぐらざか花店」「池袋花工気ランキング」も加味される。
話がややこしくなるので、ここではオーバーチュア方式で説明して、もしオークションに参加したのが三店舗だけでなく、二十店舗ぐらいあったとすると、広告は検索結果のトップページには収まりきらなくなり、二ページ目以降に送られてしまう。
二ページ目、三ページ目となると利用者の目に止まりにくくなるから、オークションに参加する人は何とかトップページに入ろうとして入札価格をつり上げていくことになる。
だから人気のキーワードは、値段が高騰しやすい。
そこで広告を出そうとする人は、知恵を絞って安い広告料で広告効果を上げようと必死になる。
キーワード広告のオークションは「花屋」みたいな単一のキーワードだけでなく、たとえば「花屋東京」「花ギフト」「フラワ1贈り物送料無料」といったように二つ以上のキーワードで入札することもできる。
そこでこのキーワードをどのようにしてうまく組み合わせるかが、頭の使いどころとなるわけだ。
たとえば東京湾で屋形船を出している会社がある。
この会社はキーワード広告を始めたそれほどクリック単価は高くなかったが、しかし客もあまり集まらなかった。
「東京湾屋形船」という組み合わせのキーワードを入力して検索する利用者が、あまりいなかったからだ。
屋形船の会社は、必死で考えた。
「屋形船を利用しようという人たちはどんなキーワードで検索しているんだろう?」そこでわかってきたのは、夜の東京湾に遊びに行こうと思っている人たちは、プランとして屋形船を考えているケースが少ないのではないかということだった。
「今度の宴会はみんなで東京湾の夜景でも見たいね」と社内で盛り上がっても、そこでいきなり「屋形船に乗ろう」とはならない。
宴会幹事が東京湾の夜景を楽しむために検索エンジンでなにかのサービスを探すとしても、「東京湾屋形船」というキーワードはあまり使われないようだった。
「おそらく多くの人は、『東京湾夜景』で検索しているんじゃないかな」屋形船の会社の担当者は必死で頑をひねり、ようやくそういう結論に達した。
そこで改めて、キーワード広告に「東京湾夜景」で入札することにした。
すると結果はいとも鮮やかだった。
瞬く間に大量のクリックがあり、数多くの客を呼びこのキーワード広告を利用して営業活動を行っている会社は、日本国内でも中小企業を言われ、先にも述べたが、アメリカと同じようにグーグルとオーバーチュアが市場を分け合っている。
それにしても、キーワード広告という今まで存在もしていなかったようなビジネスが、なぜこれほどまでに持てはやされるようになったのだろうか。
その問題を解き明かすためには、二〇〇〇年以降に起きたインターネットの大変動を説明しなければならない。
羽田の駐車場を経営する山崎夫妻の物語から、さらに話は広がってしまうけれども、もう少し我慢してつきあっていただきたい。
歴史を振り返ってみると、インターネットが一般社会に急速に普及しはじめたのは、一九九〇年代なかばのことだった。
日本では一九九四年、一般の人でも利用できる安価なインターネットプロバイダ(接続業者)が登場。
さらに翌九五年の秋には、インターネット接続機能が標準で搭載されたマイクロソフトのOS「ウィンドウズ95」が発売され、誰でもネットにつないで電子メールやホームページを楽しむことができるようになった。
多くの人がインターネットの中に流れ込んでくれば、当然のようにネットはマスメディアと同じように扱われるようになり、そして広告ビジネスを持ち込もうという話になる。
しかしインターネットのホームページの見た目は、テレビや雑誌とはだいぶ異なっている。
テレビコマーシャルや雑誌のグラビア広告をそのまま持ち込むわけにはいかない。
そこで考え出されたのが、「バナー」という広告だった。
先にも述べたが、バナーは「横断幕」という意味の英語で、その名のとおりホームページの上部などに左から右へと広告を掲げたのである。
最初に登場したのは一九九四年、アメリカでIT系ニュースを提供している「ホットワイアード」というホームページが採用したのが先駆けだったと言われている。
バナー広告は、ただ広告を人々に見せるだけでなく、「クリックできる」ことに最大のるわけだ。
そこでバナー広告を売る広告代理店は、「テレビや雑誌の広告と違って、クリック回数を計れば広告効果がどの程度あるのかがすべて計算できる」とPRした。
これはもちろん正しい理解なのだけれども、しかしその一方で「パンドラの箱」を開けてしまった部分もあった。
なぜ「パンドラの箱」だったのだろうか?それまでのテレビや雑誌の広告は「本当に効果があるのかどうかわからないけれど、ものすごく多くの人が見ているし、おそらく効果はあるのだろう」という漠然とした広告主の期待感から成り立っていた。
しかしこの「漠然とした期待感」が真実であるのかどうかは、かなり以前から疑問視され、「本当は広告効果なんかないんじゃないか」という指摘も少なくなかったのである。
たとえば最近もこんな記事が日本経済新聞系列のニュースサイトに掲載され、話題を呼んだことがあった。
記事を書いたのは、放送業界に詳しいジャーナリストの坂本衛氏。
まさに民放の根幹を支えるものというべきテレビCMが、ある分野においてはあまり「効かない」らしいということが、次第に明らかになってきたのだ。
2005年、のテレビCMを、一切打たなかったらしい。
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